キネマ旬報 5月上旬号 クロストーク
「村上隆 x 斉藤環『めめめのくらげ』をめぐる対話」

精神科医の斎藤環さんとの対談が掲載されました。

※以下、一部引用

斎藤:「めめめのくらげ」も『五百羅漢図』も、震災後の表現というのがひとつの共通点になっています。これらはほとんど並行して制作していたんですよね。

村上:ええ。この映画を作ったことによって、『五百羅漢図』はああいう形になりました。僕は今まで作品を現代美術の文脈の中で作ってきたんですが、ストーリーや情緒的なものを入れ込みました。

斎藤:それって、震災後に、現代美術家・村上隆の作風に、明確に加わった要素なんですか?

村上:はい。震災を経て、以前まで持っていた物語に対する嫌悪感が完全に崩壊しましたね。物語とはつまり、“方便”のことです。 自分や聴衆がこうだと思うものを都合のいいように語るための。今まではそれが嫌だったんです。常に物語を停止させて、フラットな方向に作品を持っていってた。だけど未曾有の大災害があり、そこで弱っている人たちには、狭い業界内の構造を示すだけでは伝わらない。方便から入らないと無理なんだと思い知ったんです。それから今まで、絵画や彫刻の作品がストーリー化しちゃって。「これ現代美術なんだろうか?」という 大きな疑問が自分の中から湧き出る始末です(笑)。